HEALTH MANAGEMENT INTERVIEW

参加メンバー

取締役社長

田行 啓一

理事

麻野 耕一

管理本部総務部人事課

近藤 枝里奈

管理本部総務部総務課

平井 亜矢

全国土木建築国民健康
保険組合 管理栄養士

薩川 昌代

社員の健康意識を変える
新たな働きかけ〜健康指導の手引き

麻野

本日は、当社が加入している全国土木建築健康保険組合(以下「土健保」)の薩川管理栄養士様をお招きし、田行社長、健康管理に携わる社員で、当社の取組み、今後の課題などについてお話しいただきます。まずは、田行社長に健康経営への思いなど伺いたいと思います。

田行

健康であってこそ、働き甲斐を持っていきいきと働けるし、充実した豊かな日常(プライベート)生活を送れると思います。健康であることが、仕事のパフォーマンスにも反映されます。ところが当社の場合、健康診断は全社員が受診しますが、その後のフォローをしない社員が多い状況でした。そこで、会社が個人それぞれの身体の管理を促したいと考えて、いろいろな支援策を講じています。

麻野

当社の健康管理業務の概要を教えて下さい。

近藤

私は人事課配属で、業務の一つに健康管理業務があります。専属部署はなく、専任常勤の社員はいませんが、本社では本日出席している平井さんはじめみなさんにフォローしてもらっています。支店には健康推進者を配置し、連携して業務を行っています。また産業医、看護師さん、ご相談先として土建保さん、メンタル対応としてジャパンEAPシステムさんとも連携して仕事を進めています。

平井

一般的な事務業務とは異なり、医療的な内容も多く、産業医はじめ産業保健スタッフの関与は重要ですね。

田行

当社は、井上荘太郎先生に産業医をお願いし、適切なご指導を頂いているね。

近藤

井上産業医は相談しやすい方ですね。クリニックの院長で大変お忙しいのですが、電話してもすぐに出てくださいます。ネットワークが広く、病院を紹介して欲しい社員がいる場合、すぐに病院をご紹介いただき、その日のうちに検査してもらうこともあります。新型コロナワクチン接種や毎年のインフルエンザ予防接種も快く引き受けていただき、担当者として大変助かります。

麻野

産業医の他、産業保健スタッフとして看護師さんが1名、週に1回~2回、当社に来ていただいていますね。

平井

産業医が本当にご多忙なので、医療の専門家である看護師さんに来ていただくことは、大変心強いです。業務が立て込むときには、週に複数回来ていただけるので助かっています。

麻野

看護師さんには具体的にどのような対応をしてもらっていますか。

近藤

主に健診結果のフォローと社員の皆さんからの相談です。当然、人事課担当者からの相談、産業医対応もあります。対面、オンライン、電話、メールなどで相談業務を行っています。

麻野

土建保の薩川様にもきめ細かくサポートしてもらっていますよね。

薩川

大成設備様との関係の中では健康づくりのお手伝いをさせていただいています。大成設備様には看護師さんがいらっしゃいますので、健康づくりに役立つ情報やイベント等の助言をして、一緒に取り組ませていただいています。

麻野

当社との付き合いは何年くらいでしょうか。

薩川

私は6年程になりますが、今のようなお付き合いは10年以上だと思います。

田行

当社は健康管理スタッフが多くないことから、他の組合企業様とくらべ、相談が多いなどご迷惑をかけてないですか。

薩川

ご相談いただくことが多いとは思っていますが、それだけ社員の皆様の健康づくりに力を入れているということで、素晴らしいことだと思います。ですから、できる限りのご協力はさせていただきたいと思っています。

麻野

これからは皆さんの日頃のご苦労などをお伺いしたいと思います。近藤さんは日頃の業務を振り返って大変だと感じることはどのようなことですか?

近藤

健康診断受診の追い回しでしょうか。健診後のフォローはとても大変です。社員の皆さんは仕事がとても忙しく、健診後の精密検査や面談にすぐに応じてくれないケースもあります。当社では健診後の結果フォローで所見のある社員には、「健康指導の手引き」を配信して看護師さんと継続的にフォローしています。忙しいのもわかりますが、健康あっての仕事だと思うので、迅速に対応していただきたいと思っています。

健康指導の手引きイメージ

麻野

「健康指導の手引き」を配信という話がでましたが、もう少し詳しく教えて下さい。

近藤

2021年度に健診の各検査基準値の擦りあわせを行い設定、2022年度から健診結果と基準値を照らし合わせ様々な健康リスクを見える化するシステムを産業医と看護師さんにご協力いただきつくりました。リスクが判明した社員に、個人ごとに作成した「健康指導の手引き」を配信、フォローしています。2022年度に手引きを送付した社員123名に2023年度の健診結果の改善がみられました。

平井

この取組みですが、産業医の方が多忙ななかで、社員だけではなかなかできないと思います。看護師さんがいたからこそできたシステムではないかと思います。看護師さんと時々お話ししますが、最初は戸惑いながら、担当された皆さんの熱意に背中を押されて何とか運用までたどり着くことができ、システムができてからは、私の出番と思い頑張っています!とおっしゃっていました。

麻野

この「健康指導の手引き」によるフォローに積極的に取り組んでいますが、薩川さんはどのようにお感じですか。

薩川

追い回しをするというのは、とても良いと思います。健診結果を見て、「ぜひ病院に行ってください」というだけではなかなか行ってもらえないですし、手引きを作ることによって自分事として捉えられるので良い取組みだと思います。

麻野

定期健診について、社員へのフォロー以外で力を入れていること苦労などはありますか?

近藤

健康経営に力を入れてから受診率100%は当たり前と感じています。本社、東京支店は集団健診を実施していますが、支店では土建保さんの健診機関があれば連携できるのですが、それ以外では個別に医療機関と打ち合わせが必要で支店担当者が大変です。健診項目に関しては、毎年、法改正などにアンテナを張りながら、項目の見直しが必要かどうか気を使っています。

平井

現在、40歳以上の定期健診項目は、人間ドックの項目とほぼ同じです。胃カメラの代わりに血液検査項目にペプシノゲン検査を追加して、スクリーニングを実施、腫瘍マーカー検査をはじめがん検査も幅広く実施しています。女性固有の検査も定期健診以外で実施しています。

田行

当社の健康診断項目が人間ドックとほぼ同じであることを認識している社員は多くないかもしれません。

社員の行動変容を促す
さまざまな取組み

麻野

定期健診は1年の中で大きなイベントで、その中で土健保さん、薩川さんにもご協力いただいています。

薩川

2年目の取り組みになりますが、健康診断の際にベジメーターを持参して推定野菜摂取量を測らせていただいています。数値を見ることによって、どれだけ野菜を摂っているかが可視化されるので、他人と比較して少なかった場合は気をつけるという自覚が生まれる点では、とても効果があると思います。意識を変えるだけで野菜摂取は増えますので、良い取り組みではないでしょうか。

平井

朝食や昼食時にお弁当を買いに行った社員が、一緒に野菜ジュースを買うことが増えている気がします。これは「生野菜を食べるのが無理なら、砂糖の入っていない野菜ジュースを飲んでください」という薩川さんのアドバイスの効果ではないかなと思っています。

薩川

うれしいですね。多様な働き方に対応していくには、上手に野菜ジュースを活用することもひとつの方法かと思います。ただ、不足したビタミン、ミネラルは補えますが、食物繊維が摂れないという点では、野菜以外のもので補っていただければと思います。

近藤

定期健診で冷や冷やするのは、健診後の緊急対応です。特に便潜血陽性反応と血糖値高値です。数日で検査機関から連絡がくるのですが、本人に案内しても、すぐに対応してもらえないことがあります。便潜血は大腸がんや胃がんのリスクがあるので、すぐに内視鏡検査をお願いしています。 便秘気味や痔が原因で昨年も陽性だったけど問題なかったといった答えが来るケースは結構あります。

麻野

「自分は大丈夫」という方がいますね。そこを何とか検査に行ってもらうのは苦労しますね。当社の社員の健康状態の特徴や傾向はどうですか。

田行

やや肥満傾向があるかなと感じています。BMIが30を超えている社員もいるようだね。

近藤

BMIが25を超えている社員が4割ほどいるので、社員にもわかりやすい指標としてBMIを25以下にしよう!という目標を立てています。

平井

肥満、あるいは肥満気味の方が体重を落とせば、血圧、血糖値、脂質などの数値は落ちて、身体の負担は下がりますね。仕事も効率良くこなせて、普段の生活もより楽しめるようになると看護師さんが指導していますね。

近藤

そのため、当社では運動の習慣化や意識的な野菜摂取など、身体に良い生活の定着に取り組んでいます。運動習慣定着のために、土建保さんを通して利用させてもらっているアプリ「kencom(ケンコム)」を使ったウォーキングイベントの「歩活」を年2回行っています。年2回では十分でないと考え、昨年度から新たに年2回の当社オリジナルウォーキングイベントを開始しました。2人以上でチームをつくり、約1カ月にわたり毎日8千歩以上を目指し歩いています。また、期間を決めてボーリング大会、同志による野球やテニスの活動も支援しています。

薩川

私たち土建保も組合として「歩活」に参加していますし、加入事業所でも多くの方が「歩活」に参加していただいております。大成設備様も参加率が高いですね。

平井

当初「歩活」は、社員数約500人中、60〜70人の参加というところでした。今は160~180人が参加しています。ご夫婦でチームをつくって参加している社員もいます。

薩川

「kencom(ケンコム)」は、DeSCヘルスケアという会社がつくっているアプリです。体重や血圧などの記録ができ、セルフケアにつながるような記録がつけられます。様々な健康情報がアップされますので、そちらを見ることも可能です。また、健診結果も確認することもできるので社員の方々の健康づくりに役立てていただければと思います。

近藤

「kencom」の利用率も上がってきています。会社が社員にスマホを貸与するときに、予めアプリをインストールするようにしました。昨年、外勤者に加え内勤者全員にスマホを貸与したので、100%近いインストール率だと思います。

薩川

そのように取り組んでいただくと、土健保としては大変ありがたいです。最初のハードルを超えないと「歩活」にもつながりません。食育に関しては、恵比寿にあるヘルシースタジオでの新入社員食育研修、電子レンジで簡単に朝食を作ろうというクッキングイベント、コロナ禍の食育に関する動画制作など行いました。なかでも、新人研修としてスタジオを利用しての調理実習は、とても楽しいイベントだと思います。若いうちからの食育はとても大切なので、肥満に繋げない土台づくりとして効果が出るのではないかと思っています。

近藤

最近は新入社員の健康診断の結果も以前と比べあまり良くありません。一人暮らしで、簡単に野菜を摂取して、健康に良い食生活をしてもらうために食育研修を実施しています。社員食堂があればヘルシーメニューなどを企画できますが残念ながら当社にはなく、せめてもという思いから、事務所内自販機は、特保のお茶や野菜ジュースなどの商品がコンビニより安い価格で購入できるようになっています。

平井

運動習慣の話に戻りますが、「歩活」やウォーキングイベント、ボーリング大会、健康動画の配信視聴などに対し、参加するとマイレージが付与され、1年間貯めたマイレージに対しジェフグルメカード(食事券)がもらえる取組みをしております。

薩川

イベントに参加してしっかり歩いたら食事券がもらえるなんて羨ましいですね。

平井

「歩活」では、主催者からもらえるアプリのポイントを、チーム登録時に手続きして寄付することができるのですが、当社はほとんどのチームが寄付を希望、社会貢献にも繋がっています。人事課での試算ですが、8,000歩以上でポイントがもらえるので1回約200ポイントとして、150人の社員が参加すると3万円位になりますが、8,000歩以上はだいたい8割くらいなので、2万円程度が寄付されています。気軽に参加できる社会貢献といえます。

社員のカラダとココロを
もっと健康にしたい!

麻野

話は変わりますが、健康経営優良法人認定制度というものがあり、当社は「大規模法人部門」で毎年認定申請しています。当社は2018年度初めて申請しましたが、わずかに認定ラインに届かず、大変悔しい思いをしましたが、2019年度から毎年認定されています。当時の認定企業を調べましたが、サブコン業界初の認定だったと記憶しています。

近藤

2017~2018年頃、健康管理業務は医療の専門知識も必要で取り組みづらく、定期健診全員受診がなかなか進みませんでした。企業として社員の健康維持のために取組むことが求められはじめ、客観的に評価してもらえる仕組みとして、申請することになりました。当社の社員数は500人ほどで、区分としては大規模法人部門となります。名立たる企業の中で、全体の50%に入る必要があるなど、とてもハードルが高いと思いました。2019年度申請が、見事認定された時はものすごくうれしかったですね。その後は毎年申請し認定されていますが、申請企業数もかなり増加しており、かなりプレッシャーは感じます。

麻野

健康経営優良法人申請をして良かった点はどんなことですか?

近藤

申請することで、できていないことを再認識し、データを検証、次の取り組みに繋げられることが良い点だと思います。毎年項目が変わるので、常に挑戦し続けなければクリアできません。また、自分たちの取組みのレベルが客観的にわかることも励みになります。2023年の申請は、「健康の手引き」の取組みを含む項目で、最高評価をいただき努力が報われたと感じています。

麻野

申請にあたっての苦労などありますか?

近藤

申請はアンケート80~90問に回答しますが、苦労しながらも申請完了した時は達成感を感じますが、結果がでるまで2カ月あまり、その間はハラハラします。基準クリアしたと結果がきた時には、「やった!」と声が出てしまうほどです。2024年も最終結果が確定し、当社は、約3,500社中900位前後で、ホワイト500までの道のりは長いですが、少しでも順位が上がるよう取り組みを続けていきたいと思っています。

薩川

健康経営に取り組んでいる事業所様は多いのですが、その中でも大成設備様は初期の段階から積極的に取り組まれていて、努力が形になっていると思います。組合としては総合健保になるので、データ数が多数あり、それを活用して資料としてお渡ししています。それによってどこに改善の余地があるかを見つけていただき、組合と事業所様とコラボヘルスができればと思っております。

田行

「コラボヘルス」というのは良い言葉ですよね。当社だけでは十分な取組みはできず、土健保さんや産業医、外部の機関とコラボすることが大事です。そういった意味で、土健保さんには大変お世話になっていると思います。採用面接で当社が健康経営に取り組み健康経営優良法人に認定されていることを志望理由として答える学生もいます。企業イメージを上げる効果があると思います。

麻野

健康経営に取り組んでいくうえで、皆さんに今後の課題や抱負を伺いたいと思います。

近藤

健診結果のフォローはさらに徹底していきますが、やはり社員の意識を変える必要があると思います。仕事も大事ですが、健康が第一です。仕事があるから検査に行かない、治療を勧められても医療機関に行かないという人を一人でも減らしていくことが目標です。また、法改正による定期健診項目を変えるとの議論が進んでいるようで、情報をしっかり収集して、良いことであれば先取りして進めていきたいと考えています。

平井

シニア層の健康、ロコモティブシンドローム対応を検討しています。看護師さんは、コロナ禍で東京支店以外の支店に行っていないので、ぜひそれ以外の支店に行って、健康相談など行いたいと言ってますね。また、個人が自主的に情報を探すのは難しいので、会社として健康のための有益な情報を定期的にアナウンスすることに力を入れていきます。

薩川

今年6月にヘルシースタジオでの新入社員食育研修を予定しており、楽しみにしています。ヘルシースタジオで、被保険者のご家族の方向けの料理教室を行うこともありますので、その際はご案内させていただきます。また、大成設備様で新人研修をやらせていただきヒントを得て、他の会社の新人研修をしています。これから更に必要になってくるのは、女性やシニア世代に対するケアだと思います。歯科健診も年2回、所定の歯医者で最初の健診は無料でやってもらえます。8020運動は健康の基礎となるものですよね。

田行

人生百年時代と言われていますが、まさに会社人生が終わったら人生が終わるわけではありません。当社は2024年度から65歳定年制としました。シニア世代になると元気な方とそうでない方との差が大きくなると感じます。この会社人生時代に、自分の身体のメンテを充分に行っていただき、その後の人生のベースづくりをしていただきたいと思っています。

麻野

本日はありがとうございました。

井上産業医コメント

健康管理を担当する社員の方々が、社員の健康に対しとても熱意をもって取り組んでいると、常々感じています。社員の皆さんのみらいが明るく元気なものであるように、今後とも皆さんのからだとこころの健康に少しでも貢献できますよう努力してまいります。

看護師コメント

社員の皆さん、真面目な方が多いですね。仕事優先の傾向がありますので、しっかりとフォローをしていきたいと思います。コロナ禍で、皆様と対面でお話しする機会が少なかったので、これからは対面でも面談やイベントでの企画など力を入れていきたいと考えています。